世界で一番短い詩形。それが17文字の俳句の世界です。俳句には、いくつかの決まりがあります。一句に季語を一つ詠み込む事もその一つです。季語とは、天候、衣食住、行事、そして動植物と、身近な様々なもので、春・夏・秋・冬・新年のそれぞれの季節を表す言葉です。季語には、季節感はもちろん、日本の文化、生活様式、そして日本人の美意識が詰まっています。それ故、季語から豊かなイメージが広がり、俳句は、たった17文字でも大きな世界を表現することが出来るのです。
今年はとても雷が多い年でした。稲妻を何度も見た方も多いと思います。俳句では、稲妻は秋の季語になります。
稲妻のかきまぜて行く闇夜かな 去来(きょらい)
闇をかき混ぜるという表現で、真っ暗な空をギザギザに走って行く光が見えます。去来は、江戸時代の芭蕉に師事した俳人です。今から三百年以上前の俳人の詠んだ句に、現代の私達も共鳴出来るのは、この句が稲妻の本質を詠みとっているからです。
秋は空気が澄みわたり爽やかで、そして、食欲の季節でもあります。日本人にとって秋刀魚は、秋の食材の代表と言っても過言ではありません。
全長に回りたる火の秋刀魚かな 鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)
秋刀魚や栗ご飯が食卓に並ぶと、私達は秋になったことを実感します。昔は、七輪でもくもくと煙を出して秋刀魚を焼いていました。この句はありのままを詠んでいるだけですが、脂の乗った秋刀魚に火がついてぼうぼうと煙の上がっている景が見えてきます。それは、昭和の庶民の生活風景でもあります。
最後に秋の植物の句をご紹介します。
棉の実の弾けてみせるマジックショ- 丹治美佐子(たんじみさこ)
夏に開花する棉は秋に実を結び、その実が熟すと三裂して白い棉毛をつけた種を吐き出します。以前、その棉毛をつけたままの木の枝を頂いて、玄関に飾っていました。数日後、フッとこの句が出来ました。まあるく真っ白に弾けた棉の実は、次から次へとピンポン玉を繰り出すマジシャンを私に連想させました。これは、棉の木をマジシャンに見立てた擬人法です。こんな作句の方法もあります。
これからは、日本の折々の四季を17文字の世界でご紹介していきたいと思います。
平成20年10月1日 『未来図』 丹治美佐子
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